都営住宅の暮らし

所得

所得は、入居資格の有無を大きく左右する条件の一つです。入居する人全員の所得金額の合計が、下の表の金額に収まっている必要があります。
所得基準表
給与所得は、給与収入から給与所得控除をしたものです。源泉徴収票(翌年の1月中旬〜下旬に勤務先からもらえます)ですと、支払金額のところに書いてある数字が年間の給与収入です。給料やボーナス、残業・家族・住宅手当などを含み、通勤手当や宿日直手当(どちらも一定金額以下)を除いた数字が記載されています。源泉徴収票の支払金額のすぐ右の項目が、給与所得控除後の金額で、これが給与所得になります。

就職が前年の途中など場合は、自分自身で特別な計算方法により、収入を1年分の所得に換算する必要があります。また休職中の人の場合は、休職前1年分の収入を、所得計算の対象にされてしまうので、「休職で所得が下がったから申し込める!」と思っても、資格がない場合もあります。

事業等所得は、「等」がつくとおり、事業所得はもちろん、利子・配当・不動産・雑所得をいいます。事業所得は自営業などの所得をいい、下の事業所得でも解説しています。不動産所得は、例えばアパートの家賃や貸駐車場などで得た所得です。しかし入居資格には「住宅または土地の所有者がいる場合は申込みできません」となっています。ですから不動産所得がある人の場合、通常は入居資格がないことになります。

所得の計算の仕方は、確定申告時に「確定申告書B」を使っているはずですから、この第一表の所得の金額の合計(前述の給与所得もこの数字に含まれてきます。ただし(総合)譲渡所得、一時所得は除かれます)になります。なお土地、建物、株式等を売った時の譲渡所得は、分離課税ですのでここには挙がってきませんし、当然「事業等所得」に加える必要もありません。逆に株式を保有している人の場合、配当所得の金額がでてくる場合が多くなります。確定申告をしていない場合ですが、前年1年分を自分で計算して算出します。ただし当せん後の資格審査時には、確定申告が必要になりますので、それまでに申告が必要です。事業を始めたのが前年途中からの場合は、やはり特別な計算方式で1年分を自分で算出します。

年金は、前年分の「公的年金等の源泉徴収票」の支払金額欄から所得を計算します。この「平成◯年分 公的年金等の源泉徴収票」は毎年1月頃に前年分が、日本年金機構より圧着はがきで郵送されてきます。
公的年金等の源泉徴収票
支払金額がそのまま所得になるのではなく、計算式にあてはめて所得を算出します。例えば65歳以上(申込書配布期間終了日の翌日以前に65歳の誕生日を迎えている)の場合、支払金額が1,200,000円以下ですと、所得金額は0円になります。

年金の場合も、前年途中から年金を受け始めた場合は、裁定通知書などから1年分の所得を換算することになります。なお遺族年金、障害年金は所得としては計算されません。しかし介護保険制度の改正の中で、現在は非課税であるこの遺族年金、障害年金も、収入として所得とみなす方向で予定されています。したがって、これらの年金も、将来的には所得にいれなければならなくなるかもしれません。

これらの種類の所得をすべて合計したものが、その人の年間所得金額です。それを各人分合計します。

以下に、5つの所得計算の例を示します。これらの例はすべて、所得がそれなりに高いものの、制限をクリアしている場合です。つまりこのくらいの所得でも、入居資格を満たすんだということがわかるかと思います。

例1.
・夫(37歳)、妻(33歳)、
 幼年長(6歳)

夫 給与収入金額 4,835,000円
妻 給与収入金額 650,000円

それぞれの所得は
所得税法別表第五(一)より
夫 3,325,600円
妻 0円

家族全員の所得の合計は
3,325,600+0=3,325,600円

所得基準:家族数3人(特別区分)
0〜3,328,000円
所得基準の範囲内になります。

※上記の例は子どもが幼年長ですが、同じ6歳でも小学1年の場合ですと、一般区分になり所得基準オーバーになります。

例2.
・夫(44歳)、妻(45歳)、
 高2(17歳)、中1(13歳)

夫 事業所得金額 2,736,000円
  給与収入金額 1,200,000円
妻 給与収入金額 650,000円

それぞれの給与所得は
所得税法別表第五(一)より
夫 550,000円
妻 0円

家族全員の所得の合計は
2,736,000+550,000+0
-250,000(特定扶養)=3,036,000円

所得基準:家族数4人(一般区分)
0〜3,036,000円
所得基準の範囲内になります。

例3.
・女性(40歳)、
 小4(10歳)、小1(7歳)

夫と離婚し、その後婚姻していない。

給与収入金額 4,335,000円
児童扶養手当 (支給停止)
児童育成手当 324,000円
養育費 960,000円

所得は所得税法別表第五(一)より
2,925,600円

所得の合計は
2,925,600-270,000(寡婦)=2,655,600円

所得基準:家族数3人(一般区分)
0〜2,656,000円
所得基準の範囲内になります。

※養育費、児童扶養手当、児童育成手当は計算上所得とはされません。

例4.
・夫(74歳)、妻(73歳)

妻は要介護認定を受けており、要介護度は要支援2。これにより、区の地域福祉課で、障害者控除対象者認定書(普通障害)を交付されている。

夫 年金収入金額 4,944,000円
妻 年金収入金額 1,200,000円

それぞれの所得を計算しますと
夫 4,944,000×0.85-785,000=3,417,400円
妻 1,200,000-1,200,000=0円

家族全員の所得の合計は
3,417,400+0-100,000(老人扶養)
-100,000(老人扶養)-270,000(障害者)=2,947,400円

所得基準:家族数2人(特別区分)
0〜2,948,000円
所得基準の範囲内になります。

なおここでは「障害者控除対象者認定書」が交付されていることがポイントとなります。要介護度が一番重い要介護5であったとしても、認定書が交付されていなければ障害者控除は受けられなくなります。

例5.
・男性単身(34歳)

精神障害者保健福祉手帳3級が交付されている。今のところ、障害厚生年金3級が支給されている。

給与収入金額 3,351,000円
障害厚生年金3級 584,500円

所得は所得税法別表第五(一)より
2,163,600円
障害年金は所得には入りません。

所得の合計は
2,163,600-270,000(障害者)=1,893,600円

所得基準:家族数1人(一般区分※)
0〜1,896,000円
所得基準の範囲内になります。

※精神障害者保健福祉手帳3級では特別区分にはなりません。


預貯金

預貯金の残高や保有株式などは、生活保護の受給に関して大きな影響がありますが、都営住宅の入居資格には全く関係がありません。つまり、預貯金がほぼゼロでも、所得が少しでも上回っていれば、それだけで入居資格がなくなります。反対にぎりぎり所得内に収まっていれば、預貯金が2億円あるような人でも入居資格があるわけです。なんだか変な感じもしますが、現状ではこのようになっています。いずれにせよ、預貯金残高に制限をかけようにも、現在のような状況では困難だと思います。

どこの銀行に口座を持っているかを把握することさえができれば、何支店であろうとも、公権力(都)でもって全店(僚店)照会をかければ良いのですが、その人が何銀行に口座を持っているかなど、現在では調べる術がありません。調べるとすれば、本人が住んでいる(いた)区市に所在する銀行に行き、その人の名義口座を全店照会という方法くらいしかとれないと思います。生活保護の調査でも、平成23年にようやくとられた方法です(それまで全店照会はできませんでした)。平成30年からは、「任意」でマイナンバーの中に保有口座の情報も含められるようになりますが(平成27年9月3日衆院本会議可決成立)、平成33年以降は義務化も検討されています。

もしこのようにマイナンバーの中に、銀行等の情報も含められるようになった場合には、入居資格の中に、預貯金残高による制限が加わるかもしれません。現在でも、厚生労働省所管の住宅支援給付制度では、支給要件の中に預貯金による制限があります。また平成27年度の介護保険制度の改正で、介護保険施設の居住費・食費の低所得者に対する軽減措置が、一定の貯蓄等がある場合、軽減の対象外となりました。

ただ即座に預貯金残高が入居の要件になることはないと思います。現状では、あくまでも本人の自主申告を信じるしかないなど、さまざまな問題があります。また将来的に銀行情報が紐付けされたとしても、「マイナンバー法施行前に作った口座はどうなるのか」や「そもそもタンス預金にしていればわからないのでは?」ということにもなるからです。


事業所得

都営住宅の募集案内や住まいのしおりなどを見ても「住宅内で事業を営んではならない」旨の記述はどこにも書いてありません。青梅市営住宅の申し込みの注意などを見ますと「(2)住宅内で事業を営むことはできません」とはっきり書かれてあります。では都営住宅では部屋で事業を営んでも良いかというと、もちろんそうではありません。公営住宅法第27条第3項には「公営住宅の入居者は、当該公営住宅の用途を変更してはならない」と書かれており、あくまでも住宅として使用することを前提で使用許可を受けているのです。この27条3項にはただし書きで「事業主体の承認を得たときは、他の用途に併用することができる」とも書かれていますが、医師やあんまなど「住宅に入居している者の福祉を目的とするもの」に限定されていますので、一般的には不可能です。ただ実際には、都営住宅の居室を事務所のように使用している人もいるようです。

個人事業の場合、開業届出書を税務署に提出しますが、白色申告の場合は特に罰則もないため、結構提出していないことも多いです。つまり確定申告くらいしかしていないということです(それすらしていない人もいます)。確定申告の際は申告書Bに、収支内訳書を添付します。 収支内訳書
青色申告の場合は開業届出書その他が当然必要ですし、個人ではなく法人ともなれば、登記はもちろん法人設立届出書など多くの書類が必要です。これらの書類には事業所や住所地、事務所の所在地、代表者住所を書くことになります。この事業所や事務所の所在地は都営住宅にはできないので、実際に事務所として使っている人でも、親戚宅など他の住所を書いたりしている場合が多く見られます。

さて都営住宅が住所地で、それでいて事業をやっている場合、やはり税務署から目を付けられる可能性は高くなります。都営住宅は2年連続の高額所得者認定で、明け渡しを迫られます。事業者としては利益がたくさんでて所得が上がることは非常に喜ばしいことなのですが、一方で住宅を追い出されてしまうのは相当深刻な問題です。2年連続高所得でも、そのあとはどん底という可能性だって十分あるわけです。そうでなくても所得の増は、使用料(家賃)アップにすぐにつながります。こうなると、なんとか所得を抑えたいと思うのは当然で、税務署側もそのくらいのことは先刻お見通しというわけです。

またサラリーマンで給与所得者なのに、事業所得を申告している人もいます。もちろんちゃんとした事業なら問題ないのですが、月数万円程度のわずかな収入や、実際には事業をやってもいないのに、やったことにしている場合などがあります。そこまでして申告する理由は、事業所得は損益通算することが可能だからです。つまり高くなってしまった給与所得を、事業所得ででたマイナス(家賃やケータイ代などなんでも経費にブチ込む)で相殺し、所得を押し下げる効果を期待したものです。ただしサラリーマンの副業は基本的には雑所得になります。しかしこの雑所得では、損益通算することができません。なので事業所得として強引に申告するわけです。国税は申告納税制度であり、納税義務者が雑所得か事業所得かを自ら判断し、申告することになっています。

ただしこの方法は極めて危険です。このやり方を利用した節税本などが出回った経緯もあり、税務署も当然目を光らせています。金額がわずかでも、まずお尋ねや調査が入ると考えてください。最初のうちは大丈夫でも、あとから調査になって、遡って税金を払わねばならないことになります。5年遡及はもちろん、悪質とみなされれば7年間分遡及されます。そこに過少申告加算税(または重加算税)、延滞税に加え、都民税や特別区民税、それらの加算金、延滞金、国民健康保険税(料)等も「遡及で払え」ときます。額がある程度まとまったものであれば、途方も無い請求額になりますので、絶対にやめましょう。

都営住宅に住んでいて事業所得を申告している場合は、気をつけたほうがよさそうです。


不動産所有者

土地や建物の所有者は、基本的に都営住宅の募集に応募できません。また、入居予定者に不動産所有者がいる場合も同様です。入居後に不動産所有者になった場合も、退去を求められることになります。例外として案内に書かれているものは、「都営住宅入居後2か月以内に取りこわすこと」と「差押や立退要求等で所有者でなくなる」場合のみです。

しかしこれら以外にも例外があります(この内容は、不動産所有者に限らず極めて重要なことですので、同じ内容をトップページにも記載しています)。それはその土地や建物が、片道3時間以上の距離に所在する場合です。この条件は「募集の案内」には記載されていません。東京都住宅供給公社の都営住宅募集センターに電話で問合せをすると教えてくれます。なおその場合、具体的に距離のことを言ってください。それを例えば「不動産を所有している場合は、どんな場合でも申込み資格はないのでしょうか」などと聞くと、一言「はい、ありません(案内に書かれている例外すら言わない)」としか答えない職員もいるからです。職員の方のなかには、ごく一部ですが、本当にひどい対応の人もいます。まともな電話応対どころか、感情をむき出しにしてくる方までいました。

募集案内だけを見て、「自分には応募資格はない」とあきらめた人も多くいるでしょうから、本当に公平性に欠けると思います。これは不動産所有の話に限ったことではありませんが、いくら抽せんや審査を公正に行ったとしても、入り口の段階でこのような扱いがあると、「(このことを知っている)一部の特定の人に有利になるように計らっているのではないか」と勘ぐってしまいます。少なくとも「不動産を所有していても申込める場合もありますのでお問合せください」の一文くらいあってしかるべきだと思います。

さて、話は戻って例外的な遠方の不動産所有の場合の申込み方法ですが、申込書の記入欄10の「都営住宅に入居する方の中に、土地や建物の所有者はいらっしゃいますか。◯を付けてください。」は、2の「います」に◯を付けることになります。

不動産項目欄
そしてその横や下の余白に、所有者、物件所在地、片道の所要時間、築年数、(空き家等)現在の状況などを記載します。ポイント式のピンクの用紙の場合は、記入欄が用意されています。なお現在の状況が空き家ではなく、他人に賃貸している場合は、3時間以上でも認められない場合があるようです(不動産所得の関係かもしれません)。この内容については、都営住宅募集センター資格審査係に問い合わせしていただくほうが確実です。

なおこの3時間以上というのは、今現在住んでいる東京都内の住所地から、不動産の所在地までの所要時間です。申し込みする都営住宅の所在地からではありません。新幹線や飛行機の使用も考慮する必要がありますが、自宅の玄関前からの徒歩や、バスの待ち・乗車時間もカウントされるので、東北や東海あたりでも、意外と3時間以上になってしまいます。

ただし問題なのは、首都圏など明らかな近場の場合です。この場合はまともに申し込んでもまず無理です。では不動産を所有していることを隠して申し込んだ場合はどうなるのでしょうか。結論から言うと、おそらくそのまま審査まで素通りしてしまい、入居できてしまうと思います。

不動産を所有している人に対しては、毎年4月中旬頃から5月上旬頃に、固定資産税の納税通知書がきます。しかし自分からわざわざご丁寧に、それを見せに行くことはしないでしょう。また不動産の所在する区市役所が気をきかせて「(納税通知書の通知先が都営住宅だから)都や公社に情報提供、資料提供する」なんてことなどもありえません。

調べる都や公社の立場からすると、法務局に行くことで、全国の土地や建物、マンションの区分所有者が誰であるかを、比較的簡単に調べることができます。ですがその逆で「ある人が、全国のどこに不動産を所有しているか」を調べるのはまず不可能です。もちろん北海道から沖縄まで、1つずつしらみつぶしに確認していけば可能かもしれません。ですが1件1件につき手数料(公用の場合無料)が必要ですし、途方も無い件数ですから、調べることなど現実的には無理でしょう。先述の逆で、都や公社側から区市役所に照会をかけて調べることは可能ですが、不動産の所在地がどこの区市町村かもわからない以上、その手も使えません。

区市町村にいけば名寄帳というものがあり、その人がどこに不動産を所有しているかをまとめた一覧表のようなものがあります。しかしそれはその区市町村内だけものであり、他の区市町村のものは掲載されていません。ですから「この人はこの区に不動産を所有している」ということがわかっていれば有効ですが、「全国どこかに不動産を所有しているはずなのだが、どこの区市町村かわからない」という場合は特定ができないのです。仕方がないので調査する場合は、その人の住んでいた所やゆかりの場所、戸籍の附票を追うなどの方法が考えられますが「土地や建物の所有者はいない」と申告して入居した人全員に対してこんな調査をしていては業務が破綻してしまいます。

ですが不動産を所有しているのに「いない」として申し込むのは明らかな虚偽の申請です。他人のタレコミなどでバレてしまう場合もあります(この手の発覚の背景は、圧倒的にタレコミが多いです)。また平成28年1月施行のマイナンバー法には、今後不動産情報も加えられる可能性も十分にあります。もし発覚してしまった時には、即退去処分は当然のこと、損害賠償を求められる可能性もあります。ですから近場で不動産を所有している場合は、取り壊しや差押等の例外は除いて、都営住宅の入居はあきらめるか、当該不動産は売却する以外に方法はないと思います。


 こちらからページの上部に戻れます。